~はじめに-口の健康と全身の健康~
口腔は栄養摂取の入り口であり、ともすると全身感染症の入り口ともなりうる(図1)。口腔衛生環境の憎悪は、誤嚥性肺炎や感染症心内膜炎などの全身感染症のリスクを高める。一方、口腔機能低下は、食事摂取に影響を及ぼし、栄養の偏りはやがて全身へと影響を及ぼす。さらに口腔機能が明らかに障害されると、誤嚥や低栄養のリスクが増大し、誤嚥性肺炎や窒息などの重篤な合併症のリスクまでもが高まる。また、低栄養から全身の筋力低下が進むことで、サルコペニアや転倒・骨折の転帰をたどり、最終的に要介護状態へと陥る(図2)。

口腔機能低下の予防は、口の健康だけでなく全身の機能低下の予防につながる。すなわち、高齢者に対しての「予防歯科」とは、口腔衛生環境の維持だけでなく、誤嚥性肺炎やフレイル予防などの全身の健康増進のためのものと考えることもできる。
本項では、口腔機能と食、栄養を通したフレイル予防のためのオーラルフレイル予防について考えていきたい。
~オーラルフレイル予防~
オーラルフレイルは、口の機能が健康な状態(いわゆる”健口“)と口の機能低下との間にある状態とされる。
日本老年医学会、日本老年歯科医学会、およびにほんサルコペニア・フレイル学会から2024年に出された合同ステートメントにて、オーラルフレイルを広く普及・啓発するために定義づけがなされ、一般市民向け及び専門職種向けの懸念図が作成された(図5-7)。両概念図ともにオーラルフレイルがフレイル・サルコペニア・低栄養の一因となるイメージを表している。



口腔機能は一つの機能ではなく、複合的かつ相補的な機能であるため、その機能低下に気づきにくい。そのため、早期に口の機能低下に自分で気づいてもらうため、また歯科医療者不在の場でも簡単にスクリーニングできるように、オーラルフレイルチェックとしてTanakaらのOral frailty5-item Checklist(OF-5)が開発され、その有用性が報告されている(表1)。
OF-5では、5項目の質問のうち2つ以上該当した場合をオーラルフレイルしている。なお滑舌低下については、オーラルディアドコキネシスの測定でもよい。
オーラルフレイルに該当した場合には、歯科医院への受診が推奨されているため、我々歯科医療者もその対応の準備が必要である。

<参考資料:株式会社松風「予防歯科のすすめ」より>


