(1)スポーツ外傷について
一般的には、コンタクトスポーツで受ける頭頚部部へのダメージは、口腔領域や顎骨に発生する率は高くなるといわれています。特に口腔領域では歯の破折・脱臼・脱落・歯槽骨の骨折などが多く、主に上顎前歯部に発生します。その他歯による頬粘膜や口唇の損傷なども含まれます。
顎骨では下顎骨骨折、上顎骨骨折、頬骨骨折、頬骨弓骨折などがあります。
(2)マウスガード
①マウスガードの目的
学校歯科医の重要な役割の一つとして、予防の分野があります。その予防の中には、スポーツ中に発生する事故すなわち、スポーツ外傷に対しての予防も含まれています。
スポーツ外傷は、スポーツ本来の目的である健康の維持、増進や、体力の向上に反するものであり、その予防策は極めて重要です。その予防の一つとしてマウスガードをここに紹介します。
<これらの目的以外にもマウスガードを装着しているという安心感から、積極的なプレーが出来るという心理的効果があると言われています。>
②マウスガードの装着・日装着の相違点
マウスガードは単に歯や口腔外傷を予防することだけではなく、脳を守る目的にも使用されます。マウスガードの装着と未装着の状態でオトガイ部に衝撃を与え、頭蓋内圧の変化を調べました。図の通りマウスガード未装着の場合最大で100mmHgの頭蓋内圧がかかっていますが、マウスガード装着によりその50%の約50mmHgの頭蓋内圧に減少しています。
(3)マウスガードの有用性
①開口状態で顔面に外力を受けると、マウスガードの有無にかかわらず前歯及び顎関節突起頚部に極めて高い外傷の危険性がある。
②マウスガードの使用により上顎前歯と上顎骨への衝撃吸収能が高くなることにより、外相予防効果が高い。
③かみ締めた状態では、マウスガードの装着の有無にかかわらず顎関節突起頚部への衝撃吸収能が高く予防が示された。
④マウスガードの装着することにより脳脊髄接合部への応力の低下が認められたので、脳震盪やムチ打ち症の予防効果が示された。
マウスガードは口唇や頬粘膜などの口腔軟組織や歯牙に対する損傷の予防効果が高い。
⑤マウスガードの使用によって外傷数や外傷の程度を減少あるいは軽減することはできても、シートベルトと同様に外傷の発生を完全に防止することはできない。
(4)マウスガード着用規定(2017年4月現在)
着用義務:アメリカンフットボール・ボクシング・キックボクシング・総合格闘技・テコンドー・ラクロス
一部着用義務:ラグビー(13歳~19歳)・アイスホッケー(20歳以下)・フィールドホッケー(中学生のみ)・空手(組手)
着用可能:野球・テニス・ソフトボール・陸上競技(投擲・跳躍)・バスケットボール・レスリング・サッカー・柔道・ウエイトリフティング・ハンドボール・バレーボール
<マウスガードの使用率をアップさせるためには、カスタムメイド(オーダーメイド)タイプを普及させることが重要と思われます。
正しく調整されたマウスガードは適合性が良いのは勿論のこと、外力による衝撃の吸収率が高くなり。不自然に起こった咬合接触をやわらげるクッションの役目も果たすことが出来ます。
そのためには、歯科医院が作成法を含め正確な知識を身に着け、研鑚を積むことが要求されます。>
参照:一般社団法人福岡県学校歯科医会
「学校における歯・口の外傷ハンドブック」より